「野球が見たいから、早く有罪でまとまろう」という人は陪審員に向かない
riho n
あらすじ
日本でも裁判員裁判が始まって少し経ちましたが、私や私の身近な人間に裁判員をやった人はまだいません。
この映画は陪審員の物語です。よくアメリカのドラマなどで弁護士が陪審員に被告の無罪を証明するために熱弁を振るうシーンがあります。この映画はそのあと、評決の前の陪審員だけの話し合いです。ある少年が父親の殺人容疑で起訴されて、そこに集まった12名の陪審員たちがその事件の評決を始めます。11人が有罪を提案しますが、一人が無罪ではないかと意義を唱えます。それから議論が始まります。
議論の最中にあるお爺さんが野球が見たいから早く有罪でまとまろうと言うシーンがあります。
事件を検証していく12人の男たちはこの少年が本当に殺害をしたのか、の重要な判断を下します。
最初は早く帰りたいから有罪と言っていた人もだんだん議論にのめりこみます。
そして12人の意見は一致します。
袴田事件
この映画を観て思い浮かべたのが袴田事件です。非常に冤罪の可能性が高い事件と言われています。
2023年に袴田事件の再審請求が決まりました。当時の裁判では裁判員裁判はありませんでしたが、
裁判官はこの12人の男たちのように熱い議論をしたのでしょうか?
冤罪だった場合には袴田巌氏の失った時間は計り知れないと言わざる負えないでしょう。現在、袴田巌氏は実姉と生活しています。再審で無罪判決が出るまで、袴田氏は法的には死刑囚です。死刑囚が拘置所でもなく刑務所でもなく、普通の家で暮らしています。
袴田氏は現在87歳と高齢です。それを差し引いても死刑囚が町を歩く事が出来ます。この大いなる矛盾を誰もが指摘しないところに、この事件が冤罪だったと物語っているように思えます。市民全員が陪審員だとすると全員が無罪と判断している、し続けていると言えるのではないでしょうか。
監督&主演
監督はシドニー・ルメットです。この映画が公開されて時は33歳です。若くして骨太の社会派の映画を世に送り出しました。主演はヘンリー・フォンダです。西部劇で大活躍した後、この映画では主演だけではなくプロデューサーとしても活躍します。アカデミー賞はノミネート止まりでした。惜しくも「戦場を架ける橋」に作品賞を譲ることになりました。
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